生チョコを扱う搬送ライン
チョコレート工場の新設にあたり、「柔らかく変化しやすい生チョコを自動で搬送したい」というご相談をいただきました。
カカオ豆を粉砕し、ミキサーでペースト状にしたチョコをプレートに流し込み、加熱・冷却を経て製品化する工程です。
当初は「とにかく運べればいい」とのご要望でしたが、実際には温度・湿度・粘度がわずかに変化するだけで搬送の安定性が崩れる、極めて繊細な条件でした。
“生もの”を相手にする搬送制御
生チョコは、季節や空調のわずかな違いで性質が変わります。乾燥していると滑りすぎ、湿度が高いとベルトに張り付きます。
そこで、コンベアの加減速や停止タイミングを細かく制御し、条件が変わっても安定搬送できるように調整しました。
さらに、ベルトへの付着を防ぐために「昼1回の清掃」を運用ルールとして導入。
生きている素材に合わせて機械を動かす、柔軟な制御設計が求められました。
コンベア速度差を吸収する協調制御
既存の包装機側の搬送速度は0.8m/分。一方、当社が設計したチョコ搬送ラインは30m/分と、実に30倍以上の速度差がありました。そのままでは包装機側のコンベアにチョコが押し寄せて積み上がってしまうため、センサーによる協調制御を導入しました。
チョコを検出すると自動で減速し、レーンに隙間ができると再び加速。この動作を繰り返すことで、6台の包装機への安定供給を実現しました。
また、ライン全体に透明カバーを設けることで、チョコへの異物混入や埃の付着を防止。食品ラインに求められる衛生性も確保しています。
食品工場仕様の防水制御ボックス
食品工場では、ライン洗浄のため頻繁に水を使用します。そのため、制御盤を一般的な産業機械のようにむき出しで設置すると、ショートやカビの原因になります。
本装置では、複数の防水ボックスを分散配置し、その内部にコントローラーを収納。水に強く、メンテナンス性にも優れた設計としました。
他の食品ラインにも応用可能
今回のノウハウは、生チョコに限らず、ハンバーグ形成ラインやサバの搬送装置など、形が変わりやすい食品にも応用可能です。
食品は常に“生きた条件”の中にあります。その日の温度や湿度、素材の状態に応じて最適な動作を選択できる制御――それが、当社の食品搬送ラインの強みです。