狭小空間で4台のロボットアームが連動する検査装置
「限られたスペースで製品の外観検査を自動化したい」というご相談をいただきました。
装置のサイズはわずか2m×2m。その中に4台のロボットアームを組み込み、照明照射とカメラ検査を同時に行うシステムを構築しました。
当初はお客様が自社で開発を進めていましたが、動作干渉や特異点制御の難しさから途中で断念。当社が引き継ぎ、約2週間という短期間で試運転まで実現しました。
4台のロボットアームを最適配置
装置内部には、2台1組のロボットアームが2セット。1台が製品を掴んで回転させ、向かいの1台が照明を照射しながらカメラで検査を行います。
それぞれが異なる動作をするため、わずかなタイミングのズレでも衝突のリスクが発生します。しかも、使用したロボットアームは耐荷重が大きくリーチ(可動範囲)が長いタイプ。リーチが長いと動作半径が広がるため、設置スペースに対して動く範囲の余裕が少なくなり、別の装置や安全柵に干渉するリスクが高まります。
そのため、アームの軌道設計をミリ単位で調整し、“ぶつからないギリギリ”の安全な動作を実現。狭い装置内でも、安定した稼働と高精度な検査を両立することができました。
特異点を回避する独自制御
ロボットアームには、「特異点」と呼ばれる制御不能な体勢があります。アームが180度以上回転したり、伸びきった体勢になったりすると位置情報が乱れ、制御が不安定になる現象です。
今回の装置では、アームが頻繁に回転動作を行うため、この「特異点の回避」が大きな課題でした。
そこで、アームの動作を細かく分割し、角度や姿勢を調整。位置ズレや暴走が起こらない安定動作を実現しました。
スピード立ち上げ
今回の案件は、8月の中旬に正式依頼を受け、9月初旬に試運転という非常にタイトなスケジュール。お客様が途中で断念しかけたプロジェクトを、短期間で確実に立ち上げました。
狭小空間・多ロボット・高難度制御という3重の課題を「特異点ゼロ」で乗り越えた本案件は、当社の制御設計力と現場対応力を象徴する事例です。