粉末トナー充填ラインの自動化
事務機器メーカー様から、「粉末トナーの充填からパレタイズまでを自動化したい」というご相談をいただきました。これまで人の手で行なっていた一斗缶(約20kg)の移載作業を、ロボットで代替したいという内容です。
設計から現地立ち上げまで、約2週間というスピードで完了させました。
ロボット×PLCで構成した自動ライン
装置は、粉末トナーの「充填」「ふるい」「パレタイズ」を行う構成で、同じユニットが2系統あります。
安川電機ロボットをPLCで制御し、限られたスペースの中で複数の工程を一括自動化しました。ハンドには複数のツールを搭載し、充填から積載までをロボットアーム1台でこなせるように設計。
粉末トナーは一度に流し込むと飛散してしまうため、「揺らしながら入れる」「角度を指定できる」など、細やかな動作制御を組み込み、安定した品質を実現しました。
パレタイズの自由度と、衝突ゼロの動作設計
一斗缶は2段積みで、下段だけでも10パターン以上の積み方に対応。タッチパネルからパターンを選ぶだけで、自動的に積み替え動作を切り替えられるようにしました。
一斗缶自体にはセンサーが付いていないため、ロボットは登録データに基づいて位置を判断します。パレットのみをセンサーで検知し、データ制御で確実に積載。フェンスぎりぎりの動作範囲ながら、一度も接触トラブルを起こしていません。複雑な動線の中でも正確に動作できるよう、軌道や減速ポイントをミリ単位で調整しました。
また、急に電源が落ちても衝突せずに復帰できるように、停止時の状態をプログラム内で保持しています。
“非常停止が多い現場”でこそ、真価を発揮
この装置の最大の特徴は、人の検知で非常停止させることが多い現場での使いやすさにあります。
今回のロボットは大型で、人の立ち入りが多いエリアに設置されるため、安全面への配慮が不可欠でした。ライトカーテンや人感センサーを設置し、人を検知すると一時停止。立ち入りが解除されると自動で復帰する仕組みを採用しました。
一般的な装置では、停止後に手動で原点復帰を行う必要がありますが、当社では原点復帰を完全自動化。「人が入る→止まる→出る→すぐ再開」という流れをスムーズに行えるようにしました。
人の立ち入りが頻繁な現場でも、安全性と稼働率を両立できます。単なる自動化ではなく、人が関わることを前提に設計された自動ラインです。